「将来のこととかさ、いろいろ考えると、私は怖くて離婚なんてできない」そうか、「無謀」じゃなくて、「勇気がある」という言い方もあったか。
バツイチは勇敢。 この言葉に慰められた。
「勇気?」あとは離婚届を出し、引っ越しをするだけだ。 大破壊事業完成を前に、私は夫に右手を差し出しそうになった。
が、いかにも不謹慎なので引っ込めた。 でも、正直、夫も、ホッとしていたと思う。
引っ越しは、年末も押し迫った日に決めた。 私は仕事がつまっていて、年末ギリギリまで休むわけにいかなかったのだ。
私は実家へ電話し、母に一方的に言い渡した。 「引っ越し日、決まったから」「決まったって、いい、言うてないで」「もう、業者にお願いしたから」「なにも、そんなに慌てて越さいでも(引っ越さなくても)良かろうがね」母は業者に頼んだことを知ると、ようやく観念したらしかった。
「年末ギリギリやて、夜逃げみたいで、周りにあやしまれるやんけ」兄も反対した。 戻るんだから、公明正大にこだわってどうなる。
考えてもみておくれ。 離婚しようという夫婦が、仲良く正月を迎えられるわけがないだろう。

私だって、新しい気持ちで新年を迎えたい。 引っ越しが決まってからは、夜遅く帰宅しても、夫は不在のことが多くなった。
私がゴソゴソと荷物をまとめていくのを、見るのがイヤだったのかもしれない。 「あなた、明日引っ越しだったのに、笑ってマイク握ってる場合じゃないでしょう」と、編集長のSさん。
引っ越し前日は、仕事場のクリスマスパーティ兼忘年会だったのだ。 お別れの前日の夜を、夫と2人っきりで過ごさなければならないほうが、コクってもんよ。

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